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札幌弁護士会等の会長共同声明

更新日:6月9日

弁護士会

札幌弁護士会、特定非営利活動法人女のスペース・おん、しんぐるまざあず・ふぉーらむ北海道は、2024年(令和6年)3月8日に「離婚後共同親権を導入する家族法制見直しに反対する共同声明」を発表しました。


声明の背景


法制審議会は2024年2月15日の総会で、離婚後の父母双方に親権を認める共同親権の導入を含む民法等の改正要綱案(以下「要綱案」)を決定し、法務大臣に答申しました。しかし、離婚後共同親権には以下のような重大な問題があるため、たとえ選択的なものであってもこれを認めるべきではありません。また、仮に認めるとしても、離婚後共同親権について父母双方の真摯な同意がある場合に限るべきです。


問題点


1. 離婚後の親権行使の困難性


夫婦間の信頼関係が損なわれたために離婚に至る場合が大多数であることから、離婚後に父母間で親権の行使について円滑な協議を行うことは一般に困難です。離婚後も父母の双方が親権者と定められた場合、子に関する重要な決定(転居、進路決定、医療行為など)について、離婚後の父母間で協議することが必要となりますが、その協議が円滑になされなければ、子の利益が損なわれます。


2. 急迫の事情および日常の行為の不明確さ


要綱案は、親権の行使に関する父母間の意見対立の問題に対処するため、「子の利益のため急迫の事情があるとき」や「監護及び教育に関する日常の行為」については、一方の親による単独親権行使を認める例外規定を設けています。しかし、「急迫の事情」や「日常の行為」の範囲が不明確であるため、現実に子を監護している親が他方の親から裁判を起こされ、応訴負担を強いられる危険があります。これではひとり親が更に追い詰められ、子の生活の安定が損なわれる結果となります。


3. DV・虐待事案への対応不備


例外規定は離婚前の父母にも適用されるため、DV・虐待事案においても子連れ別居が違法な親権行使とされ、裁判を起こされることが予想されます。これにより、DV・虐待事案の保護が後退する可能性があります。


4. 監護者の指定の必要性


要綱案は、離婚後の父母の双方を親権者と定める際に監護者の指定を必須としないとしています。監護者の指定がなされないと、養育費の請求権者や児童手当等の受給者が不明確になり、現実に子を監護している親が経済的に困窮し、子の生活基盤が脅かされる恐れがあります。また、監護者の指定がなければ、父母間の意見対立を招き、家庭裁判所の判断に時間がかかり、子の利益が損なわれる可能性があります。


5. 家庭裁判所の負担増大


要綱案の附帯決議に指摘があるように、離婚後共同親権が導入される場合、家庭裁判所はこれまで以上に大きな役割を果たすことになり、その負担が著しく増大します。家庭裁判所がその役割を適切に果たすためには、人的・物的体制の強化及びそのための財源確保が不可欠です。


結論と要望


要綱案には、父母の真摯な同意がない場合にも離婚後共同親権を認める点、監護者の指定を必須としない点について重大な問題があります。これに強く反対します。仮に離婚後共同親権が導入されるとしても、DV・虐待事案の保護が後退することのないよう、例外事由を拡張すべきです。また、家庭裁判所の体制強化と財源確保も同時に行うべきです。



おやこハピネスは、今後も弁護士会の動向に関心を持ち、注意深く見守っていきます。


離婚後共同親権を導入する家族法制見直しに反対する共同声明

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