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埼玉弁護士会の会長声明

更新日:6月9日

弁護士会

2024年5月14日、埼玉弁護士会は「離婚後共同親権についてさらに慎重かつ十分な国会審議を求める会長声明」を発表しました。


2024年3月8日、離婚後共同親権を導入する内容を含む民法等の一部を改正する法案(以下「本改正案」)が国会に提出され、同年4月16日には衆議院本会議で賛成多数で可決され、同月19日より参議院での審議が開始されました。しかし、本改正案には以下の問題点が指摘されています。


1. 「非合意・強制型」の共同親権の問題点


本改正案では、裁判上の離婚の場合、家庭裁判所が離婚後の父母に親権の共同行使を強制する「非合意・強制型」の共同親権を可能としています。しかし、DV事案では加害者を共同親権から確実に排除することが難しく、DV加害者が親権を支配の手段として利用する可能性が高まります。DVは密室で行われ、被害者の精神的負担が大きく、その立証は困難です。したがって、離婚後も加害者が被害者と接触し続け、支配を続けることが可能となり、被害者と子どもに深刻な影響を与えます。加害者との関わりが続くことで、被害者は心理的に追い詰められ、子どもは安定した環境での生活が難しくなります。


2. 家庭裁判所の体制の不備


家庭裁判所の人的・物的体制が整っていない現状では、離婚後の親権行使に関する紛争が増加することが予想されます。家庭裁判所は現在でも余裕がない状態であり、新たに増加する紛争に対処することは極めて困難です。適正かつ迅速な判断を行うためには、裁判官、家裁調査官、書記官、調停委員などの人的体制の強化が必要です。また、調停室や待合室などの物理的体制の充実も求められます。これらが整わないままでは、子どもに関する事項が円滑に決定されず、その不利益を子どもが被ることになります。


3. 共同親権の例外規定の曖昧さ


本改正案では、親権の共同行使の例外として「子の利益のため急迫の事情があるとき」と規定されていますが、この範囲が不明確です。DVや虐待事案、医療行為に際して、どのような場合が急迫の事情に該当するかが明確ではありません。これにより、被害者は「急迫の事情に該当しないのではないか」と不安を抱き、必要な行動をためらう可能性があります。医療機関や学校などの教育機関においても、単独の親権者の同意のみで医療行為や教育方針を決定した場合のリスクが懸念されており、現場の混乱が予想されます。


4. 子の意見表明権の欠如


本改正案には、子どもの意見表明権が明記されておらず、手続きにおいて子どもの意見をどのように反映するかが不明です。子どもの意見を尊重し、適切に反映する体制が整っていないことは、子どもの利益を損なう可能性があります。


結論と要望


以上の点から、本改正案が可決・施行された場合、様々な弊害が生じることが予想されます。特に、DVや虐待の被害者保護が後退し、子どもの利益が損なわれる可能性が高いです。DV被害者の声に十分に耳を傾け、慎重かつ十分な審議を求めます。


本改正案の内容を十分に周知し、国民の理解を得るための慎重な議論が必要です。埼玉弁護士会は、離婚後共同親権についての拙速な議論を避け、現実に子どもに不利益が及ぶ場面を想定した慎重な制度設計と予算確保を求めます。


 

おやこハピネスは、今後も弁護士会の動向に関心を持ち、注意深く見守っていきます。


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埼玉弁護士会の声明全文については、公式サイトまたは関連資料をご参照ください。


離婚後共同親権についてさらに慎重かつ十分な国会審議を求める会長声明

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